死ぬ間際に


陸遜が目を開くと、大粒の涙が朱然の顔へと落ちた。

朱然は、その顔に驚き、自身の痛みより先に陸遜の涙のことを口にした。


「どうして、そんなに泣いているのです」
「然…然、然」




「良かった」




「叔武どのもいるのですか」
「いるが」
「伯言どのは、どうして泣いているのです」


孫桓は、まだ号泣し続ける陸遜の説明を、朱然に話した。
もちろん、自身までも泣いていることは隠した。


「伯言どの」
「はい」
「ありがとう」


朱然が動く右腕で、陸遜の濡れた頬を触る。
心なしか朱然の手は温かみが戻ってきている。

まだ僕の涙は止まりそうにない。