MARRY ME!


そーっとそっと。
後ろから手を伸ばして、すぐ近くの陸遜を捕まえようとする。


「あの、甘寧どの」


その手は予想通りに弾かれたものの甘寧は懲りずに陸遜に触る。
陸遜の帽子をとって、髪をなでようとするものの、帽子は彼にとって
お気に入りのものらしく、なでる前に反抗して取り返されそうになる。


「ちょ、こら!大人しくしてろって!」
「もー!なんでこんなことするんですか!返せ!このやろう!」
「おま、このやろうとか…!あっ」


陸遜の帽子は甘寧の手からあっという間に奪われ、それは凌統の手の中へ。


「なにやってんの、あんたら」
「あ、凌統どの」


陸遜が凌統へ手を伸ばすと、凌統は帽子と陸遜を見比べて、にやーと笑みを浮かべた。
その笑顔に陸遜は溜息をついた。この人も同じだったか。
陸遜は帽子を返してもらうことを諦め、二人から顔を背けた。


「陸遜さん、髪さらさら〜」
「大人しくしてればもてるんじゃね?」
「大人しくしてなくてももてるわよ」


声が増えた。
陸遜が後ろを振り返ると、二人に加えて尚香が笑っていた。


「姫さん、陸遜はそんなにもてねぇよ」
「失礼な」
「あんたたち二人よりはもてるわよ」
「たとえば誰に?」


少なからず期待した陸遜は尚香の顔をじっと見る。
自分が甘寧や凌統にもてるのは知っているが、そんなのはちっとも嬉しくない。
できれば可愛い女人がいいのだ。自分だって男だから。


「そうねぇ〜…甘寧とか凌統とか」
「違いねぇ」
「姫様!」



「あと、私も陸遜がすきよ」



陸遜が、甘寧が凌統が、目を白黒させて尚香を見る。
尚香は楽しそうに笑って、陸遜をじっと見る。


「あの…えっと…」
「困ってる顔も可愛いわね陸遜!」
「…違いねぇ」


尚香はにこにこしたまま陸遜の頬をなでた。
陸遜は固まったまま、顔が赤く染まる。耳まで真っ赤だ。



「でもね、残念。私、玄徳様との結婚が決まったの」



尚香は陸遜の頭をぽんと叩いて三人から離れた。
楽しそうに尚香は来た道を楽しそうに戻っていく。
取り残された三人はぽかんと彼女を見送った。



「あの…私はからかわれたんでしょうか…」
「自慢しにきただけでしょう…」
「大丈夫。陸遜は俺と結婚すればいいし」


「甘寧…今日こそ潰す!」
「わああ!ちょ、人の部屋でやめてください!」
「凌統も俺と結婚すればいいだろ!」
「しねえええええええええええええ!!!!!!!!」