二ヶ月と二週間と四日目。


毎日毎日、空はばかみたいに晴れて、陸遜の気持ちをより一層、高ぶらせる。
凌統が遠征に出て、もう二ヶ月。


書簡が届き、何気なくいつも通り開いて見ると、
彼の筆跡が並んでいて、しかもその中には数週間後には帰還すると書かれていた。
数週間。今日はその書簡が届いてから二週間と四日だ。
もしかしたら、と何度も外に出て見るが、それらしい気配は感じられない。
呉の、のどかな、夏。


甘寧は相変わらず、毎日のように絡んでくるし、鬱陶しいことこの上ないが、
彼を見るたび、彼と喧嘩していた凌統を思い出させた。
普段陸遜に、いや、他の人間にもだが…あまり怒らない凌統が
彼を目の前にすると怒る。目の仇にする。子供みたいだと思う。
そして子供みたいないたずらをするのだ。そんな彼も愛しかった。
あの、大人びた、いや、大人ぶった凌統が。


「陸遜、また遊んでるのか?」
「息抜きです」
「そんなにあいつが待ち遠しい?」


おそらく笑っているであろうか甘寧の表情は逆行に遮られて見えない。
夏の太陽は強すぎる。肌をじりじりと焼く感じ、それもあまり好きではない。

ばかみたいに晴れて、でも悲しく、寂しく、切なくなりすぎないのは、
この太陽と、この男のおかげだと思う。

全く、感謝しにくい存在だ。どちらも。


「そうですね」
「…あれ、凌統」
「ばか言わないで下さい」


凌統殿はまだ…と言いかけて、陸遜は我が目を疑った。
甘寧が指差した方向には、汗を浮かべてこちらに歩いてくる人物が見える。


「甘寧…」
「…しかも只ならぬ殺気を漂わせてるな」


俺はこれで!と甘寧は陸遜が止める間もなく逃げ去った。
呆然としていると、その間に凌統は、陸遜を引っ張って立ち上がらせた。


「こんな暑いところにいないで、日陰へ入りましょう」


凌統も、甘寧に負けず劣らず眩しかった。
ばかみたいな太陽のせいで、表情がはっきり読めない。早く日陰へ。


凌統が腕を引っ張る。
背中に向かって言い逃した「おかえりなさい」を言うと、
彼は振り返って「ただいま戻りました」と笑った。